ヒット曲の秘密に迫る→コード進行

新企画:実際に曲を聞きながらコード進行を確認する

ヒットする曲はどういう曲なのか。この課題に対しての答えは基本的に感動である。
人々を感動させる曲・・。これこそがヒット曲になる原点だ。
ところで人間(特に日本人)はどういう曲に感動しやすいのか?
それを追求するとまず出てくるのが、コード進行の重要性である。

コード進行ならびに主要なコードで言えることは、時代を超えて普遍性があることである。
いわゆるJPOPが確立された70年代から、洗練されては来ているものの、
日本人の嗜好がコード進行に対してはほとんど変わっていない。
これは別のページで書いてある常に流行とともにあったリズムと180度違うところである。
このページでは昔英語で”出る単”というのがあったが(年がばれる)
ヒット曲に出てくるコード進行を”感動順”ということで書いてみる。
(たとえばC→Am→F→Gみたいに頻度は多いが感動度の低いものは除いてある。)

JPOPで使われる主なコードはここをクリック



JPOPの3大コード進行

また、|は小節の区切りを示す。

3大コード進行 その1

I
VonVIIVIm→IIImonV(→IVIonIIIIIm7→V
キーコードCであれば
C→GonB→Am→EmonG(→F→ConE→Dm7→G)

感動の種類:陶酔していくような感じを与える。
説明:ベースラインでいくとドシラソファミレソとだんだん下がっていく。こうしたものを総称して勝手に”下り”と名前をつける。(逆にベースラインがだんだん上がっていく”上り”)もある。後半の部分は違うコード進行になっているものも多い。上りと下りのベースラインをうまく組み合わせると非常に感動的な感じが出てくる。これはまるで心の揺れをそのまま表現しているようでもある。
歴史:1970年代前半からぼちぼちでていたが、1980年代からかなり多くなってきた。 1990年代になってからはすっかり定番化した。
    しかし2001年あたりから徐々に少なくなってきている。

例:あまりにも多いので、ごく主要な曲をここであげてみる。

1976年 アリスの遠くで汽笛を聞きながらのAメロ

   (|I|VonVIIVIm|IIIm|IVIonIIIIIm7| V|)
1978年 倉田まり子のグラジュエーションのサビ

   (|I VonVII|VIm VIm7onVIV IonIIIII7 V|)   コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる
1981年 松任谷由実の守ってあげたいのサビ

   (|I VonVII|VIm VIm7onV|IV IIIm|IIm7 Vsus4 V|)   コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる
1990年Lindbergの今すぐKissMeのサビ
   (|IIIIm|VIm|VIm7onVIVIonIIIIIm7|IV V|)
1991年槙原敬之のどんなときものAメロ  コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる
   (|I VonVIIVIm VIm7onVIV IonIIIIIm7 V|)
1991年T-BOLANのじれったい愛のサビ
   (|I VonVIIVIm VIm7onVIV IonIIIV|)
1993年ZARDの負けないでのサビ(|I VVI IIIm|IV IonIIIIIV|)
1995年岡本真夜のTomorrowのサビ
   (|IVonVIIVIm|IIImonVIVIonIIIIIV6 V
   GLAYの初期の曲に比較的多い。グロリアスのAメロ
   (|IVonVIIVIm|IonVIVIonIIIIIm7|Vsus4 V
   BELOVEDのサビ(|IVonVIIVIm|VIVIII VIm|IIV
   HOWEVERのサビ(|IIIImonVIIVIm|VIm7onVIVVIVI|)。
1998年hide with Spread BeaverのROCKET DIVEのサビ
   (|IVVIm|IIIm|IVIVV|)
1998年SPEEDのMy Graduationの一番最後のリフレイン部分
   (|I VVI VIm7|IV VI V|)
1999年宇多田ヒカルのFirst Loveの最初
   (|IVVIm|VImonVIVVIIV I|)
2000年サザンオールスターズのTSUNAMI
   (|I VonVIIVI VImonVIV VonIVIII VIm|)
2000年HITOMIのLOVE2000のAメロ
   (|IVVIm|IIIm|IVIII7+9|V V|)

  2001年以後このコード進行は少なかくなってきている。その中でいくつかピックアップする。
 
2003年I Wishの明日への扉のサビ(|I VVI IIIm|IV III V|)
 
2004年&GのWonderful lifeのサビ
   (|I IIIm|VI VIm7|IV IonIIIIIm7 V|)
   くずの全てが僕の力になる(|I IIIm|VI VIm7|IV IIm|V  I|)
   大塚愛の甘えんぼ(|I VVI IIIm|IV IonIIIII III IV V|)
 
        
 類型:IVonVII(またはIIImonVII)→Vm→IVonVI(→IVmonV#→IonVIIonIV#→V
こちらはVmというコードが入る分、せつなさを強調したような雰囲気になる。
  プリンセスプリンセスのDiamondsのサビ
(|IIIIIm|IIIm|VmonVII♭|VmonVII♭|IVonVIIVonVIIVm|IVm|IonVIonVIIIIVV|)
  松田聖子の瞳はダイアモンドのサビ
(|IVonVIIVm VIIIm V IIIonV#|VI VImmaj7|VIm7 VIm6|IIm7 VI
 
3大コード進行 その2
IV
VIIIm(またはIII)→VI
キーコードCであれば
F→G→Em(またはE)→Am

感動の種類: 不安を持った感じが落ち着きに変わっていくような感じ。

説明:1、と2、はJPOPの中でも極めて重要なコード進行で、この2つで骨格ができているような曲も珍しくない。
V
のところは多くの場合VonIVになっている。

歴史:1970年代後半からでてきた。元々は財津和夫の曲に良くでてきていた。
    特に1983年頃大流行し、多くに曲に使われていた。
    2005年くらいから以前に比較して頻度が落ちている。
 
例:これも極めて例が非常に多い。ここでは主なものを紹介する。

1975年の財津和夫の作曲のチューリップのサボテンの花のサビ
   (|IVVonIVIIIm|VIIIm|VII7|)   コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる
1979年のサザンオールスターズのいとしのエリーのサビのあと
   (|IV VonIVIII VIIV VI II7+9|IV VI
1982年の河合奈保子のInvitationのサビ
   (|IV V7onIVIIIm VIm|IIm6 IIIVIm I7|)
1983年のH20の想い出がいっぱいの最後
   (|IVVIIIonV#|VIm VIVVII|)
       松本伊代のチャイニーズキッスのサビ
   (|IV VIIIm VIm|IIm7 VI I7)
1985年の菊地桃子の卒業のBメロ
   (|IV IVonVIII VIm|IIm7 VI I7|)
1986年の渡辺美里のMy Revolutionではイントロから始まり、
A
メロまでずっとこの繰り返しが続いている
   (|IVmaj7|VonIVIIIm|VIm|)  コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる
       TUBEのシーズンインザサンの始め
   (|IVmaj7|V7|IIIm|VIm7|IIm7|Vsus4|Imaj7|I7|)
1987年の仁藤優子のおこりんぼの人魚のサビ
   (|IVVIIIm|VIm)
1992年のサザンオールスターズの涙のキッスのサビ
   (|IVVIIIm|VIm|IVVIIIm|VIm|IVVIIIm|VIm|II|V|I)
    コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる
1996年の久保田利伸withNaomiCampbellのLA・LA・LA Love Song
   (|IVmaj7|VIIIm7|VIm|IIm|IIIVIVIm7)
1997年 SPEEDのWHITE LOVEのサビ
   (|IVmaj7|VonIVIIIm|VIm VImonVIVIIIVIm IIIm7|VIm VIm7)
1998年のラクリマクリスティーの未来航路のサビ後半部分
   (|IVVon7|IIIm|VIm)
       Kiroroの未来へのサビの後半
   (|IV VIIIm VIm|IIm VI|)
       TUBEのきっと どこかでのサビ
   (|IVVonIVIIIm|VIm|IIm7|V VonIVVm|I7)
1999年のBLACK BISCUITSBye-Bye?バイバイ?のサビ
   (|IVVIIIm|VIm|IVVII7|)
2000年のMr.Childrenの口笛のBメロ
   (|IVVIIIm|VIm|IIm IImmaj7|IIm7 IIm6|Vsus4|V)
2001年のモーニング娘。の恋愛レボリューション21のサビ
   (|IV VonIV|IIIm VIm|IIm7 V|I I7|)
2001年の7人祭のサマーれげえ!レインボーのサビ
   (|IV|V|IIIm|VIm|IIm7|V|I|I7|)
2004年ではL'Arc?en?Cielの瞳の住人のサビ
   (|IV|VonIV|IIIm|VIm|IV V|IIIm VIm|VII|sus4 V|)

 類型でIVVIVImがある。
1999年のB’z ギリギリChopのサビ(|IVVI IIIm|VI VIm7|) 

 また、余談となるが、Winkの愛が止まらないは外国曲のカバー曲であるが、カバー時にイントロが変更され、日本人向けに受けが良いように、若干派生形だがここで出てくるような(|IVmaj7|VIVIm|)のようにコード進行から始めて、インパクトが大きくなるようにされているというエピソードがある。
 
3大コード進行 その3
II
m7→VIIIm(またはImaj7)→VI
キーコードCであれば
Dm7→G→Em(またはCmaj7)→Am

感動の種類:ちょっと寄り道したけどまた元にもどったみたいな感じ。

歴史:1970年代から少しずつ出ている。その1、その2に比べると短いので、感動の度合いは若干落ちる。

例:
1982年の田原俊彦のラブシュプールのサビ
   (|IIm7|VImaj7|VIm|IIm7|VIVI|)
1982年の松本伊代のTVの国からキラキラのBメロ
   (|II|V|III|VI|II| II |II|II|)
1992年米米クラブの君がいるだけでのサビ
   (|II7 V|III VI|II7 V|I VI||II7 V|III VI|II7 V|I|)
1998年のラルク・アン・シエルのHONEYのサビ
1998年BLACK BISCUITSのタイミングのBメロ。
2001年桑田佳祐の波乗りジョニーのBメロ。
   (|II7|V|III|VI|II|V#|II|V|)
2004年大塚愛の甘えんぼのBメロ。
   (|II7 V|III III VI|II7 V|Vsus4 V|)
 

3大コード進行が立て続けに出てくるケース
 

事例研究1 TSUNAMI サザンオールスターズ 桑田佳佑作曲 2000年1月26日発売

            コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる

 オリコン歴代シングル3位に位置付けられているこの曲の一番最初の6小節に|I VIVI VImonVIV VonIVIII VIm|IV VonIVIII VIm|II IImonIVonVII VonVI V| という形で上記の3大コード進行その1が1回のあとその2が2回とたて続けて使われている。さらにその2のパターンはサビにも2回登場している。恐らくこういう形で2つのコード進行が連結されて使われている曲はこれが初出と思われる。また、これに加え、この曲には曲の最初に2つの特徴がある。この曲は曲の歌い出しがキーをCで言うとソドかつ弱起で始まっている。この弱起のソドで始まる曲は格調が高い雰囲気をかもしだすのに有効である。さらにはこの曲にはイントロが無く、いきなり歌から始まる。これら全ての相乗効果で、最初の6小節を聴いただけでノックダウンを受ける程の大きな感動させる効果を与えている。筆者も始めてこの曲を聞いた時に、ほんの最初のさわりを聞いただけでこの曲がヒット曲になることを確信できた。

 

事例研究2 千の風になって 秋川雅史 新井満作曲 2006年5月24日発売

            コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる

 この曲は元々その詞の内容が大きな感動を呼んで世間に広まる結果となったが、その曲を分析してみると、実に上記の3大コード進行の連続なのである。元々この曲はAメロとサビのメロディーが近いこともあり、このような形になっている。まずAメロは(|I VI|VI VImonVIV VonIVIII VIII VIII VIm|IIVsus4 V|)で全てであり、上記3大コード進行のその1+その2+その3+αという形で構成されている。 次にサビは(|I VVI VImonVIV VonIVIII VIII VIIIVIm|II VI)でこれも全てであり、やはりその1+その2+その3+α’と最後の締めの部分のコード進行が異なるだけで最初のその1+その2+その3は共通である。このようにこの曲は曲が短く、構成が単純なこともあり、何と曲全部の3/4もが3大コード進行で構成されているのである。さらにこの曲も事例研究1のTSUNAMIと同じように弱起のソドで始まっていたり、イントロもその2のコード進行を使っていたりと、詞だけでなく曲的にもヒット曲の要素を非常に多く含んでいることが、大ヒットに結びついた要因と考えられる。

この他にその1とその2が両方出てくるパターンとして、
2004年 Kinki KidsAnniversaryのサビ(|I VonVIIVI VIm7|IV VonIV III VIm|IIm7 V|)
2005年 コブクロのここにしか咲かない花の最初 (|I IIImonVIIVI VIm7|IV VonIVI I7|)
2008年 遊吟 Fateのサビの2回目(|I VonVIIVI VIm7|IV VonIV  III VIm|IIm7 VI|)
山下達郎 ずっと一緒さのサビ(|I VonVIIVI VIm7|IV VonIVIII VIm|II VIII VIm|IIm|Isus4|I|)
等があり、傾向としてその1に変わって徐々に増えている。
 
この他にもいくつか感動度が高いコードやコード進行がある。以下特に時代によって良く使われたもの、変化のあるものを中心に見ていくことにする。

・IVm (特にIVIVm)   キーがCであればFm (特にF→Fm)

感動の種類:いわゆる泣きの感じを与える。悲しいだけでなく哀愁のあるような情感のある泣きの感情。
 
歴史:1970年代は極めて良く使われていた。1980年代に頻度は減ったが、1990年代に入ってまた”決めどころ”で使われてきている。 2000年代はまた少なくなっている。

例:1970年代の代表的な例をあげると
1973年の麻丘めぐみの私の彼は左ききのサビ
   (|IVIVm|IVI|)
 
 コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる
1973年の天地真理の空いっぱいの幸せのサビ
   (|IV|IV|I|I|IIm6 III|VIm|II|V|)
1974年のチェリッシュの渚のささやきのサビ
   (|I|III|VIm|IVm6|I|VIm|IIm7|V|)

1990年以後では、
1998年ではJUDY AND MARRYの散歩道のBメロ
   (IIIm|IVIVm|I
1998年SOUTHERN ALL STARTSLOVE AFFAIR?秘密のデートのAメロの後半(|IVIVm|IIIm|VIm|)
     Misiaのつつみ込むように・・・のAメロ2番のあとのところ
   (|IIIonIIVm|I|)
 
     Kinki KidsのジェットコースターロマンスのAメロ
   (|IIVIIIVI|)
     Mr.Childrenの終わりなき旅のBメロ
   (|IVIVm|I IIIVI VImonV|) 
 
Vm→VI  キーがCであればGm→A

感動の種類: いままで解けなかった不安がすっきり解消していくような感じ。

歴史と例:1970年代は非常にすくなかった。以下の例がある。
1974年の小坂明子のあなたのAメロ   コード解説を見ながらこの曲を聞いてみる
1978年に山口百恵のいい日旅立ちのサビ
1979年に倉田まり子のJUNE浪漫のサビ
1979年の桑江知子の私のハートはストップモーションのサビの最後
1979年のサザンオールスターズの想いすごしも恋のうちの最後
1979年の久保田早紀の異邦人のサビ
このコード進行がメジャーになったきっかけは1981年の松田聖子の白いパラソルでAメロ2回サビに1回効果的に使われたことにある。それ以後特に1980年代1990年代と多く使われてきたが、2000年代からはやや少なくなってきているように思える。
 
Vm→I キーがCであればGm→C7

感動の種類: 不安な自分を客観的に見れるようになるような感じ。 

歴史と例:1970年代は非常にすくなかった。記憶に残る限りでは1977年の岩崎宏美の想い出の樹の下でのサビ位と思われる。
  そのあと1984年の松田聖子のハートのイアリングのAメロに出てくる。これ以降かなり一般化した。
 1998年ではMisiaのつつみこむように・・・のサビ 
 2000年では宇多田ヒカルのForYouのサビ
 2004年では平井堅瞳をとじてのサビ
 


 ホームページに戻る  JPOP大研究トップページに戻る

感想をメールしてください!! 
  mailto.bmp

  
 

inserted by FC2 system